銀行借入の返済を待ってもらえる「リスケジュール」とは?

2019-11-22

銀行借入の返済を待ってもらえる「リスケジュール」とは?

会社の業績悪化や資金繰り悪化等により借入金の返済が難しくなり、毎月の返済額を減らしてもらう、あるいは元々の返済条件を変更してもらうことを「リスケジュール」と言います。今回はリスケジュールのメリットとデメリットについてお話ししましょう。

 

【メリット1】返済額が減る。

例えばこれまで毎月100万円の返済をしていたが、業績の悪化によって返済が難しくなった。そこで、銀行に返済額をゼロにしてもらうようお願いするとします。すると、本来毎月100万円返済していたものを返さなくて済む、つまり毎月100万円の資金を調達しているのと同じ効果があります。 これがリスケジュールの最大のメリットです。しかし、返済額を減らせると言っても、ずっと減らしたままというわけにはいきません。リスケジュールの期間は「半年から1年」が一般的です。1年経過後に再度リスケジュールを続けたい場合は、銀行に対して「更新依頼」をしなければなりません。

 

【メリット2】再起へのきっかけになる。

リスケジュールによって資金繰りがラクになり、時間的余裕ができます。この時間的余裕があるうちに、会社はリスケジュールに至った原因を特定し、原因の除去をするために何をしなければならないかを考え、それを経営改善計画書として銀行に提出しなければなりません。 この経営改善計画書の作成の課程が、厳しい状況にある会社を再生に導くきっかけになります。時間的余裕が生まれ、経営再生の可能性が高まること、これがリスケジュールの2つ目のメリットです。

 

【メリット3】延滞にならない。

リスケジュールとは似て非なるものに「延滞」があります。「延滞」とは銀行の承諾なしに返済をやめてしまうことです。返済額が減るという点では、リスケジュールも延滞も同じように見えますが、リスケジュールは銀行の承諾があるのに対して、延滞には承諾がありません。 つまり、延滞は借り手が「勝手」に返済額を減らしているにすぎません。そのため、延滞が続けば銀行から一括返済を要求されたり、財産を差し押さえられたりという恐ろしい結果が待っています。延滞扱いにならないのは、リスケジュールの3つ目のメリットです。

 

 

【デメリット1】新規借入ができない。

リスケジュールをするということは、「銀行の格付けが落ちる」ことを意味します。銀行の信用格付(債務者区分)には、以下の5種類の分類があります。

 

  ①正常先

  ②要注意先

  ③破綻懸念先

  ④実質破綻先

  ⑤破綻先

 

リスケジュールを行うと、一般的に正常先から要注意先や破綻懸念先に格付けされることになります。正常先以外に格付けされてしまうと、新規融資を行ってもらうことは非常に難しくなります。そのためリスケジュールをしている間、新規借入は原則期待できません。 新規の借り入れができない中、リスケジュールの原因を特定・改善し、場合によっては新たな事業基盤を構築して、正常な返済ができる体制を構築しなければなりません。また借入ができないということは、リスケジュール中に資金が足りなくなったら、 自力で資金繰りを改善する以外の方法が無いということを意味します。新規借入ができないということは、後が無いということを理解しておきましょう。

 

【デメリット2】経営改善計画の達成が必要。

リスケジュールを行うには経営改善計画書を作成しなければなりません。そしてリスケジュールを更新するには、作成した計画を達成し、順調に経営改善が進んでいることを銀行に示さなければなりません。 そのとき、もし当初計画が全く達成できていなければ、その時点で銀行が見限り、リスケジュールが終了になってしまう可能性もあります。リスケジュールを行う会社にとって「経営改善計画は必ず達成しなければならない」という責任の重さがデメリットのひとつだと言えます。

 

【デメリット3】経営者の精神的、実務的な負担が増す。

リスケジュールは、経営者にとって精神的・実務的な負担になります。計画を作るのも、作った計画を取引銀行に説明するのも、またリスケジュール開始後に、計画の達成に向けて必死に動き回るのも、達成状況を銀行に定期的に報告するのも経営者自身が行わなければなりません。 また、リスケジュールをしていることで、会社が厳しい状況にあるということが周囲に漏れないように、気配りをしなければならないのも経営者自身です。従業員に知られてしまえば、不安が広がり、退職者が増えてしまうかもしれませんし、取引先に知られてしまえば、 取引条件の悪化や取引停止になってしまうかもしれません。リスケジュールが銀行に認められ、返済額が一時的に減ったと言っても、経営者は大変な精神的・実務的な負担を担うことになります。この現実は、リスケジュールのデメリットとして見逃すことができません。

 

 

借入返済は通常、事業から生み出されるキャッシュフロー(当期純利益+減価償却費)の中から返済するというのが基本的な考え方です。しかし、多くの中小企業では返済と利益の調整ができず、手元資金からその場しのぎで返済しているというのが実情ではないでしょうか。 計画的に返済を行うには、①捻出できるキャッシュフローの額はいくらか。②キャッシュフローのうち、いくら返済に充てるのか。について把握し、金融機関に協力してもらう必要があります。そのためには自社が経営改善に意欲的であり、 作成した経営改善計画書が具体的に達成可能であることを示すことで、リスケジュールに応じてもらうことで借入金の全額返済が実現可能となることを金融機関に理解してもらう必要があります。経営改善計画書の作成を是非とも、経営再生のきっかけとしていただきたいものです。

 

私たち大矢旭税理士事務所は、経営者の方々の精神的・実務的なご負担を少しでも軽減するために、経営改善計画の作成・実行のお手伝いを致しております。 リスケジュールや経営改善をはじめ、経営に関することでお悩みの方はお問合せフォームからご連絡下さい。